内田岐三雄『映画学入門』(1928年10月15日発行、前衛書房、393頁)
小津の処女作『懺悔の刃』を「キネマ旬報」誌で批評したのは、内田岐三雄である。内田は、映画評論家の中で、もっと早く小津と知り合った。「1926年8月、大久保忠素監督『新婚時代』のロケを見学した時に、助監督の小津と知り合い、忽ち肝胆相照らす仲となった。彼の伝える当時の小津は、既に一頭抜きん出た逸材で、大スター鈴木伝明が自作の監督に臨んだほどであったという」(田中眞澄『小津安二郎全発言1933~1945』284頁)。
本書は、内田の初めての単著である。内田は1901年生まれである。ささきふさ、夏川静江、牛原虚彦、北村小松、岡田時彦、田中三郎が序文を書いている。田中は、跋も書いている。田中は跋で、内田のペンネームの由来について次のように書いている。当初は、内田のペンネームは、「重郎」。それが、阪神沿線魚崎海岸である水泳美人の脚の素晴らしさに幻惑された内田は、そういう衝動からか魚崎をさかさまに見てキサオウ即ち岐三雄とペンネームを変えたのだ。
この本が刊行された時には、既に小津との交流はあり、おそらく小津も読んだだろうと推測できる。