2023.02.12
山口猛構成『映画編集とは何か 浦岡敬一の技法』(1994年7月25日発行、平凡社、290頁)
「第二章 助手時代と小津安二郎 Ⅱ 小津映画の美学 一、小津調とは何か 二、『東京物語』のチェック・ポイント」(90-114頁)
「”親父”浜村さんは、小津安二郎監督のリズムを作ったとまでいわれるほどの人で、小津先生の信頼も厚かった。
浜村さんは合理的な人だったが、生涯、頑固にムブオラを使わないでフィルムをつないでいた。しかし、さすがに晩年は、目が悪くなってきてアクション・カットは私に任せた。
では、いわゆる小津調とは何かと言えば、ロー・アングル、バランスのとれた映像、場面転換ではオーバーラップなどの編集技術を使わず、実景のカットつなぎ、そして、何より会話の独特のリズムが小津調を決定づけているのである。その独特のリズムとは何かというと、その基本は会話の時のつなぎにあり、それを小津先生と浜村さんとの間で作り上げていった。
小津先生の映画では、台詞尻が10コマ、次の台詞頭まで6コマの間を置いて、台詞が始まるようにつながれてある。つまり16コマ、3分の2秒が台詞の間合いになる。小津先生のつなぎは、この10コマ、6コマが圧倒的に多く、それが小津先生独特の間合いになっているし、それが小津調の会話のやりとりになっている。
では、それを機械的にやれば、誰でも小津調になるかといえば、そうはならない。演技のリズムや監督の生理にも、そうした間合いが関係してくるし、私も、予告編を編集した時、真似しようとしたのだが、2ショットくらいは似せることができても、後は、どうしても狂ってきて、「どうして‥‥」と考えさせられたものだ。