2017.08.01
『近代映画』第四巻第十号通巻第三十四号(1948年10月1日発行、近代映画社、32頁)
表紙:原節子
岸松雄「映画のつくり方 その三 監督について」(4―5頁)
※一部抜粋する。「ところが、小津安二郎さんの監督ぶりなどを見学していると、監督とはかくの如きものであるかとその精進のきびしさを看おとして、その醍醐味をさえ想像できるのであります。「風の中の牝雞」の撮影中でした。佐野周二さんの肩をなめて、隣り座敷に子供が寝ています。小津さんはキャメラの位置を決め、照明に注文を出し、俳優の指の末にいたるまでこまかく指導しています。枕許にあるミシン、それに対応して椅子の位置を右に左にとズラしてみて、こんどは枕當のタオルの色が気に入らないといってとりかえさせる始末です。何から何まで自分の思うままなのです。画面を形成する一切のものが、一木一草はおろかなことです。セットの中の埃まで、小津安二郎というすぐれた芸術家の掌のうちにおさめられているわけであります。」