2022.10.08
『現代日本文学全集』月報46(1956年3月、筑摩書房、8頁)
小津安二郎「名代の味」(3-4頁)
※『現代日本文学全集25 里見弴・久米正雄集』(1956年3月15日発行、筑摩書房)の月報に寄せた小津安二郎の文章である。同月報には、小津の文章の他に、辰野隆「里見弴集のために」、河盛好蔵「『自然解』から」が寄せられている。
冒頭を引用する。「里見先生の小説を読んだのは、僕が中学生の頃、たしか、「桐畑」が始めじゃなかったかと思います。それ以来、僕は長い間の愛読者の一人なのですが、今では時々、先生の小説を、無断であちこち借用しては、映画のシナリオのねたにする、まことに、たちの悪い愛読者の一人かも知れません。いつか、僕の「戸田家の兄弟」という映画の試写に、思ひがけなく、先生が来られ、初めてお目にかかり、あいにく、その映画には無断借用の箇所が多く、甚だ汗顔、閉口頓首したことがあります。爾来、先生もあきれられ、万事、大目に見て下さる模様ですし、以来、僕は無断借用の常習となりました。」(3-4頁)