全国小津安二郎ネットワーク

小津監督を巡る文献・資料

『松竹ウイークリー』No.22(1947年4月、松竹株式会社宣伝課)

「連続読物 小津安二郎作品2 長屋紳士録」
※冒頭を引用する。
 日本映画界の至宝小津安二郎監督が、いよいよメガホンを握った。
 日本映画の復興が叫ばれているとき、これは何たる快事であろうか。小津監督は昭和十七年『父ありき』を発表して以来、胸中に烈々たる映画愛を燃やしながらもメガホンを取る機会に恵まれず、今日に至ったのである。傑作脚本としてその映画化を待望されながら遂に当局の検閲の鋏によって闇に葬られたものに『お茶漬の味』があった。小津監督はこのとき激しい怒りを感じたようであった。小市民の生活に専らカメラを向けていた小津監督が、富裕階級の形式第一主義的な生活に皮肉な目を注ぎ始めたのは『お茶漬の味』であった。小津監督の胸中には、いつも人間の幸福を希求してやまぬ至高な愛情が流れている。小津監督が好んで描く小市民の世界にも、この愛情があればこそ、冷たい浮世に耐えて生活してゆけるのだ。

最新の記事

カテゴリ

月別に見る

このホームページ内のテキスト・画像の無断使用はご遠慮下さい。