2021.01.24
『昭和十六年度 優秀映画鑑賞會』(1942年3月13日、日本映画雑誌協會、4頁)
昭和十六年度 優秀映画鑑賞會 主催 日本映画雑誌協會
日本映画雑誌協會映画賞作品決定
昭和十六年度作品決定
劇映画
第一位 戸田家の兄妹
第二位 馬
第三位 みかへりの塔
第四位 藝道一代男
第五位 江戸最後の日
第六位 次郎物語
第七位 愛の一家
第八位 海を渡る祭禮
第九位 舞ひ上る情熱
第十位 指導物語
第一位 戸田家の兄妹
松竹大船映画 脚本 小津安二郎、池田忠雄
演出 小津安二郎 撮影 厚田雄治
主演 高峰三枝子、佐分利信、葛城文子
過去に「生れては見たけれど」「出来ごころ」、「浮草物語」、「一人息子」などの名作を持つ小津安二郎が、志那事変と共に応召して、征戦に従ふこと足かけ三年、帰還後、いろいろの事情から暫らくの沈黙の後に始めて贈るのがこの映画である。どこか麹町辺の大家の没落と、それにからまる一族間の頽廃した人情を凝視して、そうした階級が翳の如く負っているものを剰すところなく描破すると共に、それに鋭い鉄槌を加えて、その憎らしいまでに洗練された演出の巧緻、会話の妙に至っては、従来の日本映画にちょっと類例を見ないほどのものである。