2021.08.14
『映画芸術』第18巻第3号271号(1970年3月1日発行、映画芸術社、122頁)
佐藤忠男「小津安二郎の芸術(第十四回)アメリカニズムについて」(78-81頁)
※冒頭を引用する。
「小津安二郎の作品歴に、もし、時代区分を加えることが可能だとしたら、昭和二年のデビューから、昭和六年の前半の『美人哀愁』のころまでを、最初の時期として一区切りしていいのではないかと思う。なにしろ、強固な保守主義者である。極端に云えば、彼の主題や美意識は、徐々に成熟してゆくだけであって、生涯、変化することはなかった。とも云えるので、時代区分をするはかなり無理がある。が、強いて云えば、この時期は、まだ新人として、時代劇、メロドラマ、ファースなど、わりに多様な素材を、あるていど会社と妥協しながら、せっせと作っていた時期である。このなかにも、「肉体美」、「大学は出たけれど」、「会社員生活」など、後年の小津の主題を早くもうち出している作品が、少なからずあるが、このばあいにも、主題の設定の仕方はさほど深刻なものではなく、娯楽映画として充分たのしめるものにするための配慮がゆきとどいていた。」