全国小津安二郎ネットワーク

小津監督を巡る文献・資料

『映画旬刊』第8号(1956年1月15日発行、雄鶏社、146頁)

表紙:シド・チャリッシ
登川直樹「小津安二郎演出「早春」撮影を見る」(40-42頁)
※冒頭を引用する。
 小津安二郎のこの前の作品は「東京物語」であった。一昨々年の秋に封切られて、その年の代表作になった。小津安二郎の作品の基調をなしている俳諧趣味といったものを考えると、これまでのいろいろな作品のいろいろな印象的な情景が頭に浮かんでくるのだが、「東京物語」はそれまでと少し調子が変わったのではないかしら。とかく、自然の情景のような風景画的人物が多かったそれまでにくらべて、「東京物語」ではズンと俗っぽい人間が登場した。人は小津調の洗練などというけれど、やはりこれは大きな屈折ではないのだろうか。すると、こんどの「早春」はどういうことになるのだろう。「晩春」「麦秋」などと同じたぐいで相も変わらず季題じみているが、果して中味も同じ調子なのだろうか。

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