2022.08.15
『新潮』第百十八巻第十一号(2021年11月7日発行(10月7日発売)、新潮社、428頁)
平山周吉「小津安二郎 第十四回 第十四章 敗戦国の「肉声のない男」たち(230-240頁)
※冒頭を引用する。
「「晩春」と「麦秋」と「東京物語」を、つづけて、並木座で、やるそうである。どれも、みな、同じやうな作品だ。今度は何か一つ、変わったものをやらないか、と、よくひとから云われる。そんな時、いつも僕は、豆腐屋なんだから、精々、豆腐の他、焼豆腐か、油揚げか、飛龍頭しか出来ないのだ、と、返事をする。さう変わったものは、一人の僕からは、生れさうにもない。今のところ、うまい豆腐を、うまい飛龍頭を、拵らへることだけで一杯だ。変わったものなら、デパートの食堂に行けばある。」『「復刻版」銀座並木座ウィークリー』(三交社)に載っている小津の短文である。小津の書いた「豆腐之圖」に添えられた文章で、わずか六頁の無料プログラム「並木座ウィークリー」昭和二十九年(一九五四)三月十日号のために書かれたものだ。