2022.06.12
『新潮』第百十八巻第三号(2021年3月7日発行(2月5日発売)、新潮社、388頁)
平山周吉「小津安二郎 第七回 第七章 「晩春」の壺は、値百万両」(178-188頁)
※冒頭を引用する。
突然、シネスイッチ銀座のスクリーンに山中貞雄監督の「河内山宗俊」のタイトルが流れ始めた。小津の「麦秋」に強く影を落とす映画として言及してきた。十五歳の原節子の時代劇出演作である。その「河内山宗俊」の冒頭部分が、第七十七回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞9を受賞した「スパイの妻」に挿入されている。観客に強く印象づけるためか、かなり長く流れる。ヴェネチアを通して、サダオ・ヤマナカの名前はこれから世界の映画人に間違いなく知られていく。そうかくしんさせるに足る、「河内山宗俊」の不意打ち映像だった。