全国小津安二郎ネットワーク

小津監督を巡る文献・資料

『キネマ旬報』No.1113 第二九八号(1961年11月15日発行、キネマ旬報社、146頁)

表紙:ソフィア・ローレン
原節子「RELAY SPEECH 宝塚のこと」(39頁)
※「冒頭を抜粋する。これまでロケーションなどで、地方に行ったことはありますが、「小早川家の秋」のように一本、家を離れ、部屋ずまいをしたのは初めてのことなので、ずいぶんと疲れました。しかし撮影が九部通り終わったある晩、小津先生、天津乙女さん、寿美花代さん、明石照子さんと過ごした楽しい一晩のことは、忘れ得ない思い出です。」

「旬報万年筆 小津映画は小津映画である」(40頁):だがここで物語以上に大きな役目をはてしているのが独自の画面構図であり一分一厘の狂いもゆるさない形式美への整頓感が終始画面上に息づいている。小説で言えば、文体のきびしさに似たものであろうが、これをどんなときにも堅持しているところはさすがに小津らしい。開巻映し出されるタイトルは例によって薄褐色の布地に浮き出させ、以下話の途中にも大阪はじめ関西の街上風物だけのインサートを入れる。この手法は東宝だろうと大映だろうと変わらない。まさしくその断片は小津以外だれもやらないカットである。どこで作っても変わらないこの行き方を押し通すということは美術や文学のような個人芸術の場合ならとにかく映画のごとき集団の総合力を必要とする芸術、おまけに撮影所によってカラーの違う職場の場合など並大抵なことではないと思う。それをあえてつらぬき自己のスタイルを崩さぬところは今日の邦画界の現状の中で異例といっていい。

小倉真美「『小早川家の秋』に見る小津映画の特質」(68-69頁)

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