全国小津安二郎ネットワーク

小津監督を巡る文献・資料

八尋不二『映画の都のサムライ達』(1980年12月25日、六興出版、245頁)

「交遊記 伊丹万作、小津安二郎」(39―49頁)
「小津安二郎」(44―49頁)
※一部抜粋する。「小津安二郎は僕より一つしか年上でないにもかかわらず初対面の時から大人(タイジン)の風格があった。それは山中や鳴滝組と、鬼怒川温泉で例の合作をやっていた時のことで、或る日、黒だったか、グレーだったか、ハッキリ思い出せないが、黒っぽいコートにスーツの大きな男が、「いよう、やってるか」といいながら、自分の室に戻ってきたような気易さで入ってくるなり、ゆったりと胡坐をかいて、煙草をくわえた。それが小津安二郎だった。誰も紹介しないし、お互いに挨拶を交わしたりもしない。それでいて百年の知己の如く、隔てない話に花が咲いて、酒になった。誰もが彼のことを小津ちゃん(オッチャン)というので僕もそう呼んだ。何となく気が合って、それから彼が京都へでると必ず同席したし、また彼は京都が好きで、よく京都を舞台にしたり、そうではくてもシナリオ・ハンチングにかこつけては京都に寄り、いきつけの「なるせ」や「開陽亭」で酒杯を傾けた。酒が入ると機嫌がよくなり、冗談を言ったり洒落を飛ばしたりするが、いくら飲んでも酔い潰れるということは決してなかった。いつも愉快な春風駘蕩たる酒であった。いつだったか、依田義賢が滔々と映画論をブチ始めると、「京都の人は酒の席に仕事の話を持ち込むんだね」と軽くイナされて、依田は途端に鼻白んでしまったことがある。」(45―46頁)

最新の記事

カテゴリ

月別に見る

このホームページ内のテキスト・画像の無断使用はご遠慮下さい。